「冬だからね」
隣を歩く琴。
いつものように大きなカバンを持っている。
職員室に森下の姿はなかった。
2人は安心して学校を出た。
「いいね琴子は家近くて」
「あぁ、しら…真人の家は結構遠いもんね」
「引っ越したいなぁ」
「あんな立派なお家があるのに?」
真人の顔を覗き込む琴。
「…ひとりで住みたい」
「独り暮らしは大変よ。誰もご飯作ってくれないし、洗濯も掃除もしてくれないし。何より朝起こしてくれる人がいないのが辛いわ」
そう話す琴を見て、真人はクスっと笑った。
「それは部屋見たら分かったよ」
「……そう?」
「目覚まし5個だったよね」
「よく見てたわね…」
琴は恥ずかしさを隠す為、鼻の頭をかいた。

