森下の腕にいっそう力が増した。

「長谷川先生…まだキスの経験がないようですね」

森下の不気味な微笑みに、琴は血が引いていくのを感じた。

「この唇…かわいいな」

琴の唇にそっと触れる森下。

「こんなにプルプル震えちゃって…」

「やっ…」

顔を背ける琴。

そんな彼女の両腕を握り壁に張り付ける森下。
そして強引に琴の唇に自分の唇を重ねた。

イヤ!―

目を見開いたままの琴。

こんなの―

一粒の涙が零れた。

こんなの―

苛立ちと共に沸き上がるのは悲しみという感情。

嘘でしょ―


森下の唇が一度離れる。
泣いている琴を見ると、彼は再度彼女の唇を覆った。
抵抗する琴を押さえつけ、何度も角度を返る森下。
そして深いものへと彼女を陥れる。

Pure…

真人の声が琴の脳裏をよぎる。
ついさっきの言葉を何故か懐かしく感じていた。

もう、Pureじゃない…

森下は琴を近くのベッドに押し倒した。