白い吐息


目を開けると真人が笑っていた。

「やっぱ先生、可愛い」

「もぅ!」

少し膨れながらも、琴は上機嫌だった。

頬に落とされた誓いのキス。
その場所はくしくも朝、森下にクリームをすくわれた場所だった。








不思議な気持ちなの
白居くんに抱き締められたとき…
私、嫌じゃなかった……







『琴子って、彼氏いるの?』

『へっ!?』

『だから、付き合ってる男とかいるの?』

『…いないよ』

『昔は?』

『……いっ…いません』

『何、その顔。怒ってるのか』

『だって、白居先生が変なこと聞くから…』

『別に変なことじゃないだろ。何か恥ずかしい?』

『……』

『…?』

『先生、この年で何の経験もないのって変?』

『クス…』

『何で笑うの!真剣に話してるのに』

『…琴子は可愛いな』

『……////』

『変じゃないよ。琴子はそのままでいて』

『そのまま?』

『欲しくなったらキスくらいオレがしてやるから』

『…なっ…冗談やめて下さい!』

『ついでに嫁の貰い手がいなかったら、オレが結婚してやっから…クス』

『…白居先生のバカ!』


白居先生のバカ…



白居先生の嘘つき…




なにも
してくれなかったじゃん…








自宅に戻ると、琴は急いで姿見の前へ走った。
そして上着を投げ、セーターとブラウスを脱ぐ。

「やだ…赤くなってる」

鏡の中の自身を見て呟いた。
白い腕に赤く染まる帯状の後。
真人の力がいかに強かったかを物語っていた。
右の頬を撫でながら琴は深くため息をこぼす。