白い吐息


「さっきも言ったでしょ。分からないって…」

視線を泳がす琴。

「新しい恋をすれば、忘れられるんじゃない?」

真剣な眼差しが琴の身体を突き刺した。
まるで心を見透かされているようで、琴は急に恥ずかしくなった。

「白居くん…」

琴の胸にまた新鮮な痛みが走る。

「先生が、忘れたくないなら仕方ないけど…オレ…そんな風に辛そうにしてる先生のこと見てらんない」

真人は親指の腹で琴の涙の後を拭いた。

顔に手を触れられた瞬間、琴の心臓がバクバクと震えだした。


「先生…オレのこと、好きになって」


体内で何かが熱く燃えているようだった。

でも―


「なっ…何言ってるのよ…私は教師よ…」

琴は真人の手から離れる。

「だから?」

真人の瞳は本気だ。

「白居くんは…未成年だし、生徒だし…」

「そんなの、どうでもいい!」

真人は言葉を吐き捨てると、琴を引き寄せ力いっぱい抱き締めた。
それは今朝より激しく、そして切なかった。

「しっ…しら…」

苦しさと突然の衝撃で頭は真っ白の琴。

「……!」

真人はただひたすら彼女を腕の中で束縛していた。