「ほら、早く訳してよ」
遠くにある真人の意識を戻すため、琴は明るい口調で言った。
「…何?」
「コーレ」
琴は机の上のプリントをコンコンと叩いた。
「ああ!」
ハッとする真人。
「余白に日本語で書いてみてよ」
急いでカバンを開け、ペンケースを取り出すと、真人はシャープペンシルを一本握り締めた。
アレ?―
プリントに向かう真人の姿を正面から見て、琴はあることに気付いた。
「白居くん…左利き?」
「そーだよ」
真人は上目遣いで驚いてる琴の顔を覗いた。
「…そう…なんだ…」
「そんなに珍しい?」
不思議そうに真人が問う。
「…いや、そうじゃないの…ただ…」
これは偶然?
『あれ?白居先生って左利きなんですか』
『そうだよ。ガキの頃、親に直せって言われたんだけどね』
『直さなかったんだ』
『まぁね。悪いことしてる訳じゃないしさ』
『確かに』
『カッコイイだろ。サウスポー』
『うーん…』
『結婚指輪は右手の薬指にする予定』
『えっ?』
『浮気沢山出来るなぁ〜』
『ダメじゃん!』
同じ名前…
同じ左利き…
これも運命っていうの?

