「ベタだね…先生」
真人は彼女の気持ちを察してくれていた。
「…私、教師なのに色々冷たいこと言ったなって思って…だから」
「Sorryか」
真人の言葉が琴の口を閉ざした。
ペコリと頭を下げる琴。
「先生、こーゆー時は何て返せばいいの?」
「えっ?」
「Sorryって言われたら、言われた方は何て答えるの?」
「あ…それは…色々…」
戸惑う琴。
「気にしてないよって英語で何て言うの?」
「……」
琴の胸が熱くなった。
「教えて、センセ」
「Don't worry about it.」
発音しながら琴は涙が溢れてくるのを必死でこらえた。
「Don't worry about it.」
真人が琴の瞳を真っ直ぐ見て発した。
照れた笑顔が眩しくて、琴はハニカミながら下を向いた。
「ありがとう」
その言葉は琴にとって一番自然で素直な返事だった。
「昨日わざわざ家に来てくれたのは、コレを言う為だったんだ」
真人はプリントのSorry…という文字を長い指でなぞった。
「…うん」
「オレ、てっきり先生がオレのこと心配して来てくれたのかって勘違いしてた」

