白い吐息


前回この部屋で彼に冷たく発言してしまったこと、とても後悔してたはずなのに今朝また彼に冷たくしてしまった自分をずっと責めていた琴。
本当は今日ここに彼は来ない、来てくれないと思っていたから。
だから、こんな他愛もない話が出来たことが内心とても嬉しかったりしたのだ。琴はこの時、戸部の言ってた話はひとまず置いておこうと思った。
目の前にある真人の笑顔が消えることが、何故かスゴく怖いことに感じられたから。

「本題に戻るわよ」

「は〜い」

「好きな曲とか翻訳できたら楽しく勉強できると思ったの…意味分からず聴いてても面白くないじゃない」

「だね」

「私も昔、こういうやり方で勉強したりしたんだ」

「へぇ…」

真人は少し興味を持ったらしく、歌詞の載ったプリントをジーっと眺めていた。

「今回は私が勝手に選んだ曲だけど、白居くんの好きな曲とかでもいいから。洋楽のほうが、やりがいあるかもしれないし…」

琴が話し終わると真人はプリントから目を離し、真顔で琴の顔を見つめた。

「sorry…」

呟く真人。

「あっ…」

琴はドキッとした。

「この曲のタイトル…"ごめんなさい"なんだ」

「そーだね…」

それは琴がわざと用意した言葉だった。