朝から彼のことばかり考えていた琴は複雑な気持ちになった。

「先生、何するのか考えたの?」

「えっ?」

しばしボーっとしていた琴は真人の声で我に返った。

「だから、この部活の内容考えたの?」

「勿論!」

琴は急に笑顔になって、真人の席の前に自分が座る椅子を持ってきた。
そして真人にプリントを一枚差し出した。
不思議そうな顔で受け取る真人。
琴はゆっくり席についた。

「先生…コレ…」

「CRYSTALの曲よ」

「……」

「知ってるでしょCRYSTAL」

「人気のアイドルグループだろ」

「私、ファンなんだよね…上原くん」

琴の目はキラキラ輝いている。

その様子を見て、いささか途方に暮れる真人。

「で、この歌詞で何すんの?」

「訳すに決まってるじゃない」

「訳す?」

「英語の部分だけ日本語に翻訳してみて」

「…そーゆーことか」

真人は少し戸惑った顔をして頭をかいた。

「歌うより楽でしょ」

「いや、歌う方が楽だけど…」

「白居くんは歌わなくていいの!CRYSTALのイメージが壊れるもん」

「なんだよそれ」

ふくれる真人の顔を見てニコニコ笑う琴。

「つーか先生趣味悪くない?」

「はっ?」

「マニアックか!」

真人は琴の顔を指さし笑った。