白い吐息


『…英語の成績最悪』

『せっかく外国文化研究部に入ったのにね』

『……』

『せっかくオレがマンツーマンで指導してあげてたのにね』

『…白居先生』

『ん?』

『それって嫌味』

『さぁ?琴子のとらえかた次第だな』

『ん〜…!また琴子って言った!』

『だって琴って呼びにくいんだよ…コトコトって感じで、噛みそう』

『…長谷川って呼べばいいのに…』

『何か言った?』

『べっ、別に!』

『…別にねぇ…』


『私の人生って、ずっとこうなのかな…』

『人生?』

『今の成績のままなら、受験できるのは外れの少ない女子大の推薦位でしょ…。仮に受かったとしても勉強嫌いだし、合コンとかして遊んでて、あっという間に2年経っちゃって…気が付けば中小企業のOLとかやってて、お茶汲みとか…コピーとか…つまんない毎日が続いてるの……。そんな運命なんだろうな…』

『お前、今からそんなこと考えてたの?』

『だって…』

『ネガティブだな。オレ、運命って嫌いなんだよ』

『……?』

『運命って、つまりは誰かが引いたレールの上をそのまま歩くってことだろ』

『誰が引いたレールなの?』

『…親だったり、偉ぶってる大人だったり』

『運命の赤い糸とかも、そんな誰かが決めた相手だったりするの?』

『それは…神…神様かなんかなんだろーな』

『…神様の引いたレールが運命かぁ。先生上手いこと言うね!』

『だからさ…』

『だから?』

『オレはそんなレールの上を歩きたくないわけ』