「私は、この1年間あなたのことを見てきたけど、あなたは努力家だから貧乏でも頑張れるわよ」
「貧乏って…」
田口先生が思わず呟く。
「頑張んな!」
関口先生は琴の気合いのポーズの真似をした。
それを見て笑顔になる琴。
「はい!頑張ります!」
真人が隣で手をパチパチ叩いた。
それにつられて、みんなが拍手する。
沢山の人の思いに、琴は胸が熱くなった。
大丈夫…
頑張れる…
みんながいるから…
琴と真人は久々に2人きりで夜の道を並んで歩いた。
そう、琴のアパートまでの短い道。
「いつ…出発するの?」
「終業式が終わったらスグに行くつもり」
「そっか…」
「今、友達が住む所探してくれてるんだ」
琴の声は弾んでいた。
「じゃあ、手紙とかも出せるね」
「連絡…しないで」
立ち止まる琴。
「手紙もメールも電話も…何もしないで」
「何で?」
真人は不安な顔をする。
「真人が恋しくて寂しくなっちゃうからさ…」
「琴子…」
「それに、1年間ちゃんと考えたいんだ。私が真人を本気で愛しているのか」

