「留学、しようと思うの」
琴は告げた。


「留学って…どこに?」

戸部が尋ねる。

「L・Aかな…」


「何で…何で急にそんな気になったんです?」

田口先生が戸惑っていた。


「…私、この何月かで分かったんです。人間としてスゴく弱い点や、教師としてダメな点が…」


「そんなの、僕の方が沢山ありますよ」

「そうですよ。私だって未熟だし」

森下に田口先生が続ける。

でも、関口先生だけは何も言わず、ただ目をつぶっていた。


「私は…教師の前に、ひとりの人間として、もっと強くなりたいんです。そして納得のいく人間になれたら、今度は自分を誇れて、人に優しくできる教師になりたいんです」


「生徒を守れる教師ね」

黙っていた関口先生が呟いた。

「はい」

琴は強い口調で言った。





「…真人さん…みたいな?」

「うん。白居先生みたいな…」

真人の反応は以外にも冷静だった。



「どれくらい行くの?」


「とりあえず1年間かな」

「長いね…」

戸部が淋しそうに言う。


「短い方だよ。本当は2年くらい行きたかったんだけど、お金もないしね」


「大丈夫!」

関口先生が大きな声で頷いた。