真人はゆっくりと目を開けた。

「愛してる…」

そう呟きながら。



真人の視界に飛び込んで来たのは、高校の屋上の柵を越え、裸足で足場ギリギリに立っている琴の背中だった。




いつか…夢にみたことがある…


真人はぼんやりそう思った。











「…い…くん…?」


ほら…



あの悪夢と同じ…




琴は目に涙を浮かべて振り返っていた。




そっと手を伸ばす真人。


琴もその手に自ら手を伸ばす。





夢だと…



この後どうなるんだっけ?



そう…



そうだ…








この手は彼女を突き落とすんだ!





そう思った瞬間だった。


真人の手が琴の背中を目指した。


「…真人」






やめてくれ!



やめてくれ真人さん!



彼女は貴方を呼んだんじゃない!





オレを呼んだんだ!!




これ以上、オレの身体を操らないでくれ!!


















「……」

手がピタリと止まった。



良かった…










真人がホッとしたのもつかの間。



琴は風にあおられバランスを崩し、真人の方へ手を伸ばしたまま…