『真人…最悪…』
『何?』
『よりによって、あんな女の子供と同じ名前なんて…』
『名前…同じ?』
『白居真人…憎らしい…』
『お母さん?』
『今まで耐えてきたけど、こんな屈辱的なことはないわ…』
『お母さん…』
『こんなことなら、あなたなんて産むんじゃなかった!もう最悪よ!あなたもあなたの父親も!』
『……』
『私の前から消えて!』
『……』
『消えてよ!』
真人…
どうか…
消えないで……
「先生、ここの屋上は鍵が壊れてるの」
「そうか…」
琴と真人の姿をした白居先生は、琴の通っていた高校から、通っている高校に姿を移していた。
ドアノブに手をかける琴。
「行こうか」
2人は屋上に出る。
冷たい風が全身を刺した。
「寒いな…」
「冬だもの」
手をつなぎ、屋上のへりまで歩く2人。
「いいのか…琴子?」
柵に手を軽く置いて白居先生は聞いた。
「いいの」
「本当に?」
「白居先生の所へ行きたいの」
人形のような琴にためらいはなかった。
「真人くんのこと、後悔しない?」

