「…か…な」
私は…
あの日以来、初めて涙を流した。
「琴、泣いて!泣いていいんだよ〜!」
香奈はヒーヒーと泣いていた。
「…かっ…ぅう…」
まるでもらい泣きみたいに涙が伝染した。
ポロポロと落ちる涙はやがて互いの服を汚していく。
白居先生…
白居先生…
「しらぃ…せんせ…」
滝の様な私の涙。
もう止まらなかった。
「…白居先生〜!!」
私は香奈にしっかり抱きついて大きな声で泣いた。
今迄蓄積されていた思いが溢れだして決壊していくようだった。
「先生〜!」
何度も何度も呼んだ。
この声が
天国に届けばいいのに…
泣いて泣いて泣き疲れて、私は眠くなった。
香奈の肩にもたれていると、彼女はカバンから何かを取り出した。
「琴…白居先生だよ」
香奈は小さなビンを私に握らせた。
「先生…?」
「白居先生の灰…」
これが先生…
ただの粉じゃん…
「琴、きっと大丈夫だよ。琴なら立ち直れる」
「……?」
「そのビンを握り締めて」
私は香奈の言う通り、右手でビンを握り締め、拳を作った。
「そして、こうやってその手でこめかみを2回ノックするの」

