白い吐息


お通夜にも、葬儀にも行かなかった。

先生が死んでしまったことを受け入れられないというのもあったけど、

私の心自体が死んでしまったようだったから。




目を開けて、人形のように無表情で自室の床に座っていた。



悲しいとか、寂しいとか、そんな感情すらわかなかった。

ただ…
何も考えられなくて、何も手につかなくて、眠りたくもなくて、消えてしまいたかった。



人魚姫の人魚のように、私は泡になりたかった。





そんな置物のような日々が1週間も続き、食べ物も食べれなくなっていた私を家族は無理矢理外に連れ出した。

近所の診療所に連れていかれ長い点滴を受けた後、写真館へ向かった。

私は晴れ着を着させられ、家族で正月の記念写真を撮影した。


「ハイ、笑って!」

写真館のおじさんが陽気にお願いしてくる。



それでも、その時の私の顔は正に人形だった。

出来た写真の中には、どこか遠くを見ているうつろな自分がいた。


「琴、キレイね」

お母さんが気を遣って明るく振る舞っているのが感じられた。



ゴメンね…


そう言いたかったけど、喋ることが出来なかった。
何かを言われると首で返事をした。