白い吐息

私は先生に駆け寄り、傷だらけの手を握った。


温かい…

ほら


先生…


生きてるじゃん!


「先生!」

私は大声で呼ぶ。


「白居先生!」

私が先生に話し掛ける度に周りの人が泣いていく。


何で泣くの!


泣かないで!



先生はまだ生きてるのに!


「…せ…先生」

愛しい顔を見つめる。



大好き…



「せんせ…目…開けて…」


大好きなの…



「せんせ…お願い…」



大好きで仕方ないの…



「…嫌…」



ずっとずっとずっと…


「ひとりに…しないで…」


ずっと…



「琴子…だ…よ…」



愛してるの…



「呼んで…」

泣きたくないのに、涙が溢れた。


「呼んでよ…」



涙が止まらない。



涙は止まらないのに…


「先生!」






先生の心音が止まった。


心電図の線が一本になる。




嘘だ…

先生はまだ温かいの…



死んでないの…






だから…

「やめて」

脈を計って時刻を告げた医師に、私は殴りかかった。

余計なことしないで!

先生は生きてる!


先生は死んでない!