白い吐息


「長谷川!」

廊下の奥で担任が手招きをしていた。

息苦しさを忘れて走る私。
窓に赤いライトが反射されていた。


「白居先生は!?」

私は担任の服にしがみ付く。

「こっちだ…」


担任に連れられ処置室に入る。


ピ…ピ…

心電図の音に手が震えた。

最初に目に入ったのは白居先生の母親らしき人だった。

口元にガーゼのハンカチを当て泣いている。


何で?

何で泣くの…?



先生の心臓は動いているのに…!



影になっていた担任が避けて、私はやっと先生の姿を確認した。





「せん…せ?」





残酷な光景とはまさにこのことを言うのだろう。

赤い血が先生の身体に巻き付けられている包帯を染めていた。
わきにはボロボロに引き裂かれた服。

毎日見ていた大好きな先生の顔…
夕日にキレイに染まっていた美しい肌…
そんな頬に大きく亀裂が入っていた。

いつもドキドキしながら見つめた唇…
触れたかった唇はかすり傷で腫れ上がっている。


昼間とは別人のよう…

目だって、閉じたままピクリともしない。


ねぇ…

何で…

こんなの嘘でしょ。

先生の好きな冗談だよね!