白い吐息


その時は知るよしもなかった。



明日が永遠に来ないなんて…




握りしめていた先生の携帯を悪いと思いながら、興味本位で開いてみた。

待ち受け画面に写っていたモノ…



「ダイヤの指輪…?」

何かのパンフレットを写したような感じだった。






涙が零れた。


先生が自分のものにはならないって知ったから。


でも…



先生は結局、誰のものにもならなかった。




涙を零した数時間後、家で宿題を片付けている私のもとに、担任から電話が入った。



「「長谷川?」」

「…はい」

「「今、病院に居る。…長谷川も急いで来なさい」」

「病院…?」

「「白居先生が事故にあわれた…」」




頭が真っ白になった。


そして着替えもせず、財布とふたつの携帯だけを持って知らない街の知らない病院へと急いだ。



先生…




先生…




浮かんでくる言葉はそればかり。


他に何も考えられなかった。



だけど、現実は無情で襲い掛かってきた。






先生……




走ってきたせいで、上手く呼吸が整えられない。
私は息苦しさにめまいを感じる。


先生…


病院のロビーには深刻な顔をした人たちが集まっていた。