「寒いの嫌いなのに…やっぱ琴子って変わってるな」
変わってるのはどっちだよ。
「そーですね」
私はスネて口を尖らせていた。
先生は一番肝心なモノを分かってない。
本当に…
本当に気付いてないの?
私が一番好きなモノ…
大好きなもの…
大好きな人…
「先生なのに…」
呟いてみた。
「何か言った?」
この鈍感バカチン!
「白い吐息が一番大好きだよ〜って言ったの」
素直じゃない私。
鈍い私。
バカなのは、私の方だった。
この時、好きと告げていれば後悔なんかしなくてすんだのかもしれないのに。
例え悲しい結末が待っていようと…
「ゴメン急用が出来た!」
「帰るんですか?」
「うん。琴子も気を付けて帰れよ!」
「…はい…」
「じゃ、明日!」
それが私の聞いた先生の最後の言葉だった。
その日の夕方、先生の携帯に急用の連絡が入り、先生は荷物の整理もせずに慌てて科学室を飛び出して行った。
私は先生が携帯を忘れていったことに気付き、急いで後を追い掛けたけど、既に先生の姿は無かった。
「明日でいっか…」

