白い吐息


「大丈夫じゃないわよ。バイキン入ったら大変」

田口先生は真人を関口先生に押し出した。
関口先生が血で汚れた真人の左手を持ち上げる。

「わかった。処置するわ」

「お願いします!」

「…だから、オレは…」

口籠もる真人。


「田口先生は授業でしょ。後は私が引き受けるからいいわよ」

「ありがとございます!」

田口先生は一礼すると急いで保健室を出て行った。



「田口先生、なかなか力強いでしょ?」

関口先生は真人に話し掛けた。

「はぁ…」

真人はうつむいたまま。

「合気道やってるんですって」

ほほ笑みながら処置を始める関口先生。



「…何も…聞かないんですか?」

「ん?」

「…長谷川先生のこと…」

真人は横目でチラッと関口先生の顔を伺う。


「今の私は、ただの養護教諭だからね」

それを聞くと、真人はただ黙って関口先生と向かい合っていた。


処置が終わり、真人が席を立つ。

「ありがと…ございました」

そう言って、真人は立ち去ろうとした。


「白居くん」


「…はい」


「もし、もしでいいから気が向いたら放課後ここに来て…」

「……」

「長谷川先生にだけ居てもらうから」