白い吐息


「ここも鍵壊れてるの?」

琴が目を丸くする。

「いえ、ここはオレ等が針金でこじ開けたんです」

「えっ!」

琴の目はますます丸くなった。

「真人のこと知りたいんですよね」

「……」

「じゃあ、これは内緒ってことで」

戸部はニッと笑った。

「ホント、教師失格だわ」

琴は頭を抱えた。

「何か言いました?」

「なんでもない…」

琴は更衣室の奥に腰を下ろした。
少し離れた場所に戸部も座る。

「真人の親父さんて大手企業のお偉いさんなんですよ」

「…そうなんだ」

「お袋さんも昔は一緒の会社に勤めるキャリアウーマンだったらしいです」

「社内結婚?」

「みたいですね」

「へぇ…じゃあ結構おぼっちゃまだったりするんだ」

「しかも弟も私立の名門中学通ってたりしますからね」

「そっか、教育熱心なんだ!」

「そんなとこです」

「…でも、白居くんって全然そんな感じしないね。明るくてクラスの人気者みたいだし…人を見た目で判断するのもなんだけど」