白い吐息


ずっと、ただひとりのことを想い続けてきたんだ。
それが決して叶わぬ恋だとしても。
そう簡単に別の誰かを好きになるはずがない。
一目惚れなんてもってのほか。

ただの偶然に動揺しているだけの話。


琴は自分にそう言い聞かせて、2-Bの教室へやってきた。
廊下から教室の中を見渡す。
机の上に座ってる美少年を必死に探す琴。
しかし、彼の姿はなかった。
ふと、戸部と目が合う。
戸部はゆっくり席を立ち、琴の元へやってきた。

「真人?」

「うっ…うん」

ぎこちなさそうに返事をする琴。

「あいつなら休みですよ」

「そうなの。病気?」

「さぁ?連絡ないけど、あいつのうち事情があるから」

「事情?」

「先生、昼飯まだなら一緒に弁当食べません?」

他の生徒からの視線が気になった戸部は気をきかせ琴と共に教室を後にした。




売店でパンを買い、2人は屋上へやってきた。

「こんなところ無断で入っていいの?」

「先生が一緒だから大丈夫じゃないですか?」

「えっ…私…」

オロオロする琴。

「平気ですよ。鍵壊れてるのオレと真人しか知らないですから」

「そう…白居くんも…」

遠くの空を見ながら琴が呟いた。

「先生こっち。そんな所にいたら風邪引きますよ」

戸部は今は使われていない昔のプールの更衣室に手招きした。