「他の生徒の冗談は聞き流せるのに、彼だけは…ダメなんです…」
「それで?」
「……私、どこかで白居先生と白居くんを重ねてるんです…名前が同じだけなのに…白居くんは関係ないのに…バカみたい」
溢れる涙がハンカチを染めていく。
「白居くんは本当に関係ないの?」
「えっ…?」
琴は胸の痛みを思い出していた。
「あんた、白居くんに恋しちゃったんじゃない?」
関口先生が軽く言った言葉に琴は思わずポカンとしてしまった。
「だって、そう考えた方が自然じゃない!好きだから冗談は言って欲しくない!」
力説だった。
琴の涙もピタリと止まっていた。
沈黙―
「あっ…有り得ないですよ!」
丸まっていた琴が慌て立ち上がった。
「何が有り得ないの?」
「だだ…だって、年下ですよ!生徒ですよ!犯罪ですよ!」
しどろもどろになりながら両手を虫のようにブンブン振る琴の顔は真っ赤になっていた。
「犯罪?あんた若いのに古くさいこと言うのね」
「それに!昨日会ったばかりですよ!」
琴の声はどんどん大きくなっていった。
「だから何?」
「何って…」
「一目惚れでしょ?」
「……」
琴の思考回路が停止した。
"一目惚れって信じる?"
琴は肩が熱くなるのを感じた。

