ドスッ─
森下の顔面に力強く当たった拳。
廊下にポタポタと鼻血が落ちた。
「…やっ…やっぱり…」
震える目で殴った相手を見る森下。
「そうだよ。オレだよ」
「…うっ…嘘だ…」
「嘘じゃないよ。宏樹」
「まっ…」
流れる鼻血を必死で押さえる森下。
「真人…にぃ……」
冬の夕日に照らされる琴の白い肌。
寒気を感じ、琴は目を覚ました。
身体が…重い…
琴はしばらく天井を見つめていた。
私、正しかった…?
零れる涙。
ふと思い出す真人のくしゃっと笑った顔。
「…真人」
琴は両手で顔を覆った。
非力な自分に涙した。
そして、バカなことをしたとようやく後悔した。
早く真人に会いたい…
でも、どんな顔をして?
琴は乱れた服を直し、散らばった資料を整理し始める。
すると、カバンの中から着信音が響いた。
恐る恐る携帯を取出す琴。
それは真人からの電話だった。
どうしよう…
ためらう琴。
携帯を持つ手が震える。
「もっ…もしもし」
琴は動揺を隠すように電話に出た。
「「…琴子?」」
真人…
琴の胸が熱くなる。
「はい…」
「「どうしたの?出るの遅いから心配したじゃん」」
「…ちょっとね…忙しかったの…」

