森下は怒りに震える声でそう言いながら、琴の服を乱していった。


こんなの嫌…

愛してないのに…

真人じゃないのに…


森下は野獣のごとく琴に襲い掛かる。

「……」

でも真人を助けたいの…

たとえどんな手段を使ったとしても…

愛してるから…

傍にいたいから…



やっと見つけた
最愛の人なの……


真人…



真人…












『真人…』

『何、母さん?』

『私も先が長くないみたいだから、あなたに大事な話があるの』

『先が長くないなんて、そんなこと言うなよ』

『そうね…。でも、もし何かあったときじゃ遅いから、話しておくわね』

『そんな真剣な顔して、どうしたの?』

『真人。あなたのお父さんの話よ…』

『…父さん?』

『あなたのお父さん…、本当は生きてるの』

『…えっ?』

『ずっと騙しててごめんなさい…』

『…生きてるって…?』

『あなたのお父さんは…、白居誠一は…生きてるの』

『母さん…』

『ごめっ…真人。私の力が足りないばかりに…』

『…母さん?』

『お父さんは…、あなたを捨てた訳じゃないの。それだけは分かってちょうだい…』