「最低なんです…。教師失格」

琴の姿は保健室にあった。

「確かに教師失格ね」

関口先生は何の迷いもなくそう言った。

「…ですよね」

琴は椅子に座りながら、じっと床を見つめていた。

「あなた、生徒とちゃんと向き合ってないもの。自分は新人だから、なめられて当然とか、生徒はまともに話してくれないとか思い込んでるでしょ?」

「…ですね」

「それじゃあ、生徒の気持ちなんか理解出来なくて当たり前よ」

図星をつかれた琴はより深く背を丸める。
関口先生はそんな彼女の頭をクシャクシャっと撫でた。

「まっ、あんたの気持ちも分からなくはないけどね。私も昔はそういう時期があったからさ」

誇りに満ちた笑顔で語る関口先生。
両腕を組んで2回頷いた。

「でも…変なんです…」

鼻をすすりながら小声で喋る琴は、昨日借り、一度は返した関口先生のハンカチで口元を押さえていた。

「何が?」

優しいトーンで聞き返す関口先生。

「…他の生徒と違うんです」

「白居くん?」

琴はコクりと首を縦に振った。