白い吐息

公園へ戻ると、待たせておいたタクシーに飛び乗る琴。

「すみません。駅まで」














「真人?」

「ただいま」

そう言って真人は母親の肩に手を置いた。

「荷物は?」

「まだ、先生の所だよ。近くまで来たから寄っただけ」

「そう…。とりあえず紅茶入れるわね、寒かったでしょ」

母は急いでリビングに走った。
その後をゆっくり歩いていく真人。
そして、ソファーに腰掛けた。

「真人…」

「今日はここで飲むよ」

「そう」

母は優しく微笑んだ。





その頃琴は、電車とバスを乗り継いで墓地に来ていた。
冷たい蛇口をひねり桶に水をくむ。
それを片手に白居先生が眠る墓へ向かった。

白居家之墓と彫られたまだ新しい墓の前に琴が立つ。

親戚の人はあまり縁がなかったって言ってたけど、ちゃんと立派に立ってるんだ…

線香の香が鼻に付く。


誰か先に来てたんだ…

短くなった線香の隣に琴も線香を立てる。
ろうそくの火は風ですぐに消えてしまう為諦めた。
すでに供えられている花の横に駅付近で買った花を並べる。

「お水、取りかえたばかりみたいだね」

話し掛ける琴。
でも、返事は返ってこない。