『…バラ…?』
『最後の一輪だった』
『……』
『どうした琴子?』
『…っ…キレイ…』
『琴子と同じ』
『えっ////』
『顔の色ね。真っ赤』
『あっ…この部屋暑いんだもん!』
『じゃあ、脱げば…』
『……//////』
『暑いんだろ?』
『…バカ』
バラの花言葉も愛情…
先生、あのクッキーの中にひとつだけハートの形を入れたんだよ…
私の愛情
気付いてた?
現場近くの公園で琴はタクシーを下りた。
冬休み真っ最中の小学生が寒空の下を元気に走り回っている。
「元気だな…」
そう呟いて歩くことわずか、現場に到着した。
なにもない静かな現場。
どこにでもある光景。
真っすぐな道路、脇には少し高くなった歩道。
電信柱が等間隔に並ぶ。
その電信柱のひとつに琴が触れた。
5年前、ここにうずくまって泣いたっけ…
琴は電信柱の元にクッキーとバラを一輪置いた。
もう、泣いたりしない…
しゃがんだまま、そっと手を合わせる琴。
数秒が数分に感じられた。琴の中で、止まった時が動き始めた。
「さて…」
立ち上がる琴。
迷うことなく歩き出した。後ろはもう振り向かなかった。

