白い吐息


「あまり気にすることないんじゃない?」

「…はぃ」

優しい言葉に頷く琴だった。

「精神科医じゃないから適当なことは言えないけどね」

「話…、聞いてもらえただけでも楽になりました」

「良かったわ」

「じゃあ、私はこれで失礼します」

席を立つ琴。

「そうだ、明日の忘年会、駅前の飲み屋だって言ってたけど、一緒に行く?」


「…ぁ、ごめんなさい。私、遅れて行くんで」

「用事?」

「…命日なんです」

そう…
そうだった…


「命日って、白居先生の?」

琴の顔色を伺う関口先生。

「はい…」

もう、5年だったね…


「それが原因じゃない?」

関口先生は腕を組んだ。

「原因…ですか?」

「夢の原因よ。命日を前に他の男とイチャイチャしたから、先生ヤキモチ焼いたのよ」

「そっか…。でも、ヤキモチはないですよ」

微笑む琴。

「何で?」

「白居先生は、私のこと、ただの生徒としか思ってなかったはずだから」

「ふ〜ん」








違うよ琴子─

じゃあ、なんでオレは今もココにいるんだ?─







「真人、最近うなされないね」

月明かりの下、真人の腕の中で琴が呟く。