『まぁ、利用されてるのはオレの方だけどね。琴子の受験勉強のお手伝い』
『ひどーい!どうせ私はバカですよ』
白居先生…?
どうして?
何で?
もう忘れたんだよ
過去なんだよ
私は…
真人が好きなの……
「夢?」
「はい…」
琴の姿はいつものように保健室にあった。
「…夢ねぇ」
考え込む関口先生。
「前は見たくても見れなかったんです…なのに…」
「白居くんに抱かれた夜は毎日見る訳かぁ…5日目だっけ?」
梅昆布茶の入った湯飲みを右手に尋ねられる。
「…はぃ」
琴は恥ずかしそうにうつむく。
「毎日よね」
「……はぃ」
悩みながら照れまくる琴の姿は奇妙だった。
「白居先生のこと、まだ気にしてる?」
「全部忘れたっていったら嘘になるけど、私は今は真人のことで頭がいっぱいなはずなんです」
琴の座っているイスがキシキシと音をたてる。
「そうよね。それは見てれば分かるわ」
「なのに…どうして…」
「これは他人から聞いた話だけど、夢っていうのは、執着してるものに対してよりも、気にしてないものを見ることが多いらしいわよ」
そう言って関口先生はお茶をすする。
「執着?」

