白い吐息


「ごめん、聞こえない」

真人は琴に顔を近付けた。

「そんな質問しないでよ!」

急に頬っぺを膨らませる琴。



どっちが好きかなんて…

当たり前の質問…



「…ごめん。じゃあ、質問変える」

怒ってる顔、可愛いと思いながら焦る真人。

「なに?」

琴はそっぽを向いたまま。

「オレだったら…どこが好き?」

真人は自分で言いながら真っ赤になった。

「えっ?」

真剣なのにキョドっている真人に、何故かドキッとしてしまう琴。


「それは…」


それは……



ゴクンと唾を飲む真人。

「分からない」

「分からない?」

真人は、目のパチクリさせる。


だって…

「好きに理由はないでしょ?」


白居先生のときだって、いつから好きだったのか、どうして好きだったのか、どこが好きだったのか…
分からなかった…



「真人は、私のどこが好きなの?」

「……わっ…分からない…」

でしょ

琴は真人の手を取った。

「ただ、ひとつだけ言えるのは。真人の側にいたいってことかな」

互いの体温が手を通して伝わっていく。

「それは…同じだ」

2人が手を取り合っていると、突然会場の照明が落ちた。
同時に沸き上がる歓声。