白い吐息


「気付くって…相手は琴子のこと知らないだろ…」

「もぅ!そんなテンション下がるようなこと言わないでよ!」

と言ってようやく席に座る琴。

「何をそんなに買ったの?」

琴が抱いている紙袋を覗く真人。

「関口先生に頼まれた中原くんグッズと、とりあえず可哀想だから田口先生にお土産にする天宮くんグッズも買ったから」

「へぇ…」

「勿論上原くんグッズは自分の為」

満面の笑みの琴。

「…琴子は上原のどこが好きなの?」

「そんな急に聞かれてもなぁ〜…顔も好きだし、声も好きだし、性格も好きだし、…全部好き!」

「ふ〜ん」

膝に肘を乗せ頬杖をつく真人。

「どしたの?…もしかしてヤキモチ」

琴は真人の腕にわざとらしくツンツンする。

「…別に」

「可愛くないのぉ!上原くんは可愛いのに」

「つーか琴子テンション高い…」

「あったり前でしょ!もうすぐ目の前にCRYSTAL様が…」

ニヤニヤと気持ち悪い琴だった。

「ねぇ」

「なぁに?」

ニコニコのままで振り向く琴。

「オレと上原と、どっちが好き?」

「……」

琴の顔が素に戻ってゆく。

「琴子?」

真人は琴の顔の前で手を振る。

「…っちがって…」

ザワザワとうるさい会場の中にかき消されてゆく琴の声。