白い吐息

関口先生の言葉に琴はクスクスと笑った。

「失礼ね。何笑ってるのよ」

「だって、枯れてないってオカシイ…」

「まだまだ現役よ」

関口先生はホッとした様子で琴に笑いかけた。

「難しいんですね。人を愛するって」

「そりゃ、そーよ。愛は人生の永遠のテーマだもの」

「永遠…か」

琴は窓の外を見る。
曇り空の下を走り回るサッカー部。

「真人、家飛び出して行っちゃったんです。携帯も連絡つかなくて」

「それでココに来たんだ?」

「私…嫌われたかな?」

「あんたは、嫌いになっちゃったの?」

琴が振り向くと、関口先生は何やら引き出しの中を探っていた。

「…嫌いになんてならないですよ」

「だったら彼、今頃後悔してるわね」

と、言いながら関口先生が取り出した物。
琴には見覚えのあるものだった。

「あっ…それっ」

「洗濯したのに、この口紅が落ちないのよねぇ」

関口先生の手の上に、口紅の色がついたタオルが広がる。

あの時のだ…


「この可愛い色は、あんたよね?」

ドキン―

「はっ…はぁ」

「誰がゴミ箱に捨てたのかしら?資源は大事にしないといけないのに」

何もかもお見通しといった様子の関口先生。