白い吐息


「そっか」

関口先生は琴の背中を優しくさする。

「私が悪いんです…真人のこと、何も考えてなかったから…真人の気持ち、分かってなかったから…」

「そんなに自分を責めないの。他人の気持ちなんて、完全には分かりっこないんだから」

「先生、雄の気持ちってどんな気持ちなんですか?」

「オス?!」

関口先生は目を丸くした。

「私は…何も経験ないから…」

「そっちの話か…」

深くため息をつく関口先生。

「いい歳なのに、ごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいわよ。…それに、私もオスの気持ちは分からないし」

「関口先生も…?」

顔を上げる琴。

「あら嫌だ。目の周り腫れてるじゃない。今夜最前列なんでしょ」

そう言い、流しに駆け寄る関口先生。
白いタオルを水に濡らしてギュっとキツく絞った。

「はい。冷やしなさい」

琴の手からハンドタオルが奪われ、変わりに湿った白いタオルが渡された。

「…ありがとうございます」

「不細工が目の前じゃ、CRYSTALの目が腐っちゃうわよ」
皮肉の中にも優しさがにじみ出ている。
関口先生はそんな先生だ。

「先生でも雄の気持ちは分からないんだ…」

「だって、私も一応メスだもの。まだ枯れてないわよ」