白い吐息


「うん。電話で話してる」

真人は笑いながら言った。

「ごめんね、私…毎日バタバタしてて」

「気にしてないよ。琴子の顔が毎日見れて嬉しいし」

「今日の為に休み返上して働いたからね!」

「教師って、案外忙しいんだね?」

「私の場合、初めての仕事が多いから。仕事ってより勉強かな」

リズミカルに話す琴と真人。
でも、どこかぎこちない雰囲気なのは2人とも感じていた。

「…あのさ、真人」

琴が姿勢良く座り直す。

「ん…?」

軽い返事だが、真人の表情は少し固くなっていた。

「夜に、怖い夢見てる…よね?」

確かめるように聞いた。

「…ぅん」

「なのに、何で朝になると元気なふりするの?」

琴はためらいながら真実に迫る。

「ふり?」

「…元気なふり、してるよね?」

「違うよ…」

「……違うの?」

「琴子には、そう見えるんだね…元気なふり…に」

真人は持っていたトーストを皿に置いた。

「…ふりじゃないなら、何で朝になると元気なの?」

琴は段々と声が大きくなっていった。

「夢が終わったことに気づくから」

真人はハッキリした口調で琴に返す。

「朝起きるまで、夢見てるの?」

「そうじゃないよ」

真人の言葉の語尾がキツくなる。