「そっか…」
真人は呼吸を整えて、また目を閉じた。
「大丈夫?水でも飲む?」
琴は立ち上がろうとした。
「行かないで…」
「真人?」
座り直す琴。
「琴子が側に居てくれれば大丈夫だから」
そう言って唾を飲む真人の頬を琴は優しくさすった。
「ありがとう琴子…」
真人の瞳から一滴の涙が零れ、琴の手に絡みついた。
それから何日か、同じような夜が続いた。
でも、朝になるといつも通りの元気で明るい真人に戻っていて、本人から何かを話すこともなかった。
ただ朝が来て、昼が来て、夜が来る。
琴は学校に行く為、昼間の真人の行動は分からない。
でも、帰ってくると真人はいつも部屋にいた。
そして、夜になるとうなされ涙を流す。
琴は不安だった。
自殺未遂に何か関係があるの…
でも怖くて聞けない…
だけど真人の苦しむ姿を見てるのは辛いよ…
それはクリスマスライヴ当日の朝のことだった。
「ちょうど2週間だね」
トーストにバターをぬりながら琴はさり気なく話しかけた。
「何が?」
「真人が、ここに来てから」
「…もう、そんなに経つんだ」
「そうよ。お母さんに、ちゃんと連絡入れてる?」

