「先生には何か話す?」
直球な質問だった。
「最近ね、恐い夢とか白昼夢を見るって言ってた」
琴も窓の向こうの空に目をやった。
「夢?」
「恐いんだけど内容は覚えてないんだって」
「恐い夢か…」
戸部は目をつぶって顎を手で支える。
「私が本人から聞いたのはそれだけ」
「…それだけ?」
「他にも白居くん、何か秘密がありそうだけど、私が恐くて聞けないの」
「先生も同じか」
同じ?
「オレも恐くて聞けない。あいつが自殺しようとした本当の理由とか、何で無断欠席するのかとか」
「今、幸せなのかとか」
戸部の言葉に繋げるように琴が言う。
戸部はゆっくり頷いた。
「ごめんね先生」
戸部が遠くを見ながら言った。
「何が?」
「オレ、真人に変なこと質問しちゃった」
琴は首をかしげる。
「本気で先生のこと好きなのかって」
ドキッと肩を震わせる琴。
「……で?」
「好きだって」
「そう…」
琴はホッとしながら額の汗をぬぐった。
「良かったね」
「うっ…うん」
琴はまた顔を隠す。
動揺している姿はあまり生徒には見られたくないものだ。
「でも…」
戸部が言葉につまった。

