白い吐息

その日は風が強くて、こじ開けられた更衣室のドアがガタガタと揺れていた。

「ごめんね先生、またここで」

「ううん。隠れ家みたいで結構好きよ」

そう言って琴は一番奥の角に座った。

「他の奴には聞かれたくない話だからさ」

戸部も琴に並んで胡坐をかく。


聞かれたくない話…

真人の話…


琴は自分の表情が気になって、戸部が居る側の顔を髪で少し隠した。


「先生、真人と付き合ってるの?」

「えっ…しっ白居くんが言ったの?」

「真人からは何も聞いてないよ。先生を好きだってこと以外は」

「そっか」

琴はため息をついた。

「付き合ってる訳じゃないの?」

「直接そう言われたことはないから…」

「進展はあったんだ?」

ちょっと気まずそうに戸部が尋ねる。

「前に戸部くんから、ここで白居くんの気持ち聞いて、なんとなく意識するようになったんだ」

「それで?」

「白居くんに…好きって言われて、私も好きって言った」

大切にするって…

「つまり、両思いだけど付き合ってるかは分からないってことか」

「そんな感じ」

戸部の口振りから、真人は前にも同じような恋の経験があることが感じられ、琴は一層切なくなった。