「何でオレに聞くんだよ」
「真人、何か気にしてるみたいだったじゃん」
「森下自身に興味はないよ」
真人は歩道に転がってる空き缶を蹴飛ばして、道の脇に寄せた。
「じゃあ、さっきの質問はやっぱり長谷川先生に担任代行続けて欲しいからか?」
「戸部は考えが単純だな」
クスクス笑う真人。
「単純で悪いかよ」
「小学生のときから変わってない」
「人間そんな簡単に変われねーよ」
「そっか…」
真人の声がトーンダウンする。
「なぁ、真人…?」
「ん?」
「何で、長谷川先生なんだ?」
爪先を見つめながら戸部は尋ねた。
「何だよそれ?」
「オレ…真人が好きになった奴には文句言わないつもりだった」
「…?」
立ち止まる戸部に振り返る真人。
「応援しようと思った。でも…長谷川先生好きになってから、お前…辛そうな顔してるよ」
真人は無言で戸部に歩み寄る。
「解らないんだ」
「真人?」
「オレにも解らないんだよ」
琴子…
真人の胸がドクンと波打つ。
「ただ、あの人と出会った瞬間…好きにならなきゃいけないって感じたんだ」
義務みたいな感情…
操られているような感情…
「お前、本気で好きなのか?」

