「あー…おんぶして保健室まで連れてってくれたんだって!?」

「はい…」

真人は恥ずかしそうに頭をかいた。

「ゴメンね。重かったでしょ」

「いえ!全々」

「で…」

「は…?」

「私に何か用事?」

「別に…。ただ心配だったから」


カチャ…ン

琴は持っていた生物室の鍵を床に落とした。

「し…しんぱい?」

見開いた琴の目。

「心配…したら、ダメですか」

真人が潤んだ瞳で琴を見つめた。

しばしの沈黙。
何故か見つめ合う2人。

「ダメ…じゃ…ない…よ」

片言の日本語で沈黙を破ると、琴は鍵を拾って生物室のドアを開けた。

「私がここの顧問だって、よく分かったね」

琴が部屋に電気をつける。

「外国語研究部?」

真人は一番前の席に座った。

「正式には外国語研究同好会ね」

「同好会なんだ」

「だって4人しかいないんだもん…しかも幽霊ばっかり」

「今日も誰も来てないね」

真人は広い生物室を見回しクスクス笑った。

「うちの学校って1年生は必ず部活入らないといけない仕組じゃない?」

「だね」

「だから部活やる気のない1年坊主が仕方なく集まってるのよ」

琴がせわしくカーテンを開けた。

「勿体ないね」

「何が?」