白い吐息



「う〜…」

職員室で伸びをする琴の姿に他の教師たちが苦笑いで注目する。
琴は気付かず、あくびをしながら日誌を開いた。

今日は試験だけだし、平和だったな…

なんて、呑気に思いながらペンを回したりしていた。

「長谷川先生〜」

ドアを開けて大声で呼び出される琴。
教師たちはまた琴に注目する。
そして彼女にも…。

「…はい?」

ポカンとした返事。
琴の視線の先、呼び出した声の主は田口先生だった。

ぴょんぴょんと跳ねるように琴の元へやってくる田口先生。

「ちょっと時間いいですか?」

田口先生は耳元でボソッと呟いた。

「…はぁ」

立ち上がる琴。

小走りに退散するKYな若い教師たちにベテラン教師が咳払いをした。



琴が連れて来られた場所はさっきまで試験監督をしていた田口先生のクラスの教室だった。
勿論、生徒は皆帰っている。

「アレ書いたの、長谷川先生ですよね?」

歩きながら後ろの黒板を指差す田口先生。

「……」

琴は彼女の後を付いていった。

黒板にピンクの文字が浮かび上がって見える。


あっ…!

「今日が英語の試験の日じゃなくて良かったです」

「ごっ、ごめんなさい!」

慌てる琴。