彼女はまだ知らなかったのだから…
『好きな色?』
『そう、琴子の好きな色って何色?』
『…難しい質問だね』
『そうか?女子ならピンクとか赤とか好きそうじゃん』
『女子ならって、先生、それは差別ですよ!』
『差別?』
『男女差別。女子だってブルーが好きな子はいるんだから』
『ハイハイ…失礼しました』
『解ればよろしい』
『で、好きな色は?』
『う〜ん…』
『そんなに難しいか?』
『……白』
『白?』
『うん…白かな?』
『オレの名前の字だから?』
『ちっ…違います…』
『だったら何で白?』
『息…。冬の道でハァ〜って息を吐いたときの…あの白い息の色が好き…』
『…息の色?』
『生きてるって…感じるの…』
だから…あなたの息の色が好き…
だから…
だから…
「だから…」
ポツリと呟く琴。
場所は数学の試験の監督を任された1年生の教室だった。
やばい、今ボーっとしてた…
シャープペンシルが机をコツコツと叩く音が琴の眠気を誘う。
琴はそれを追い払う為、椅子から立ち上がった。

