「あなたと白居のこと、まだ誰にも話していないから心配しないで下さい」
「…じゃなくて」
琴が肩を震わせながら振り返った。
「…なにか?」
「そのことじゃなくて…」
息をつまらせる琴。
確かめたい…
「日誌を読んだんです…」
「日誌?」
「Please keep it seacret.」
「そのことか…」
気付いたことで言葉を投げ捨てる森下。
「秘密にしておいて下さいって、どういうことなんですか?」
「気になりますか?」
「なります!」
思わず大声になる琴だった。
「白居には聞いてないんですか?」
「それは…その…」
痛い所を突かれて、ひるむ琴。
「恐くて聞けないって感じですか」
森下の言葉は琴には全て冷たく聞こえた。
「…その通り…です」
「長谷川先生?」
「はい…」
「あなたは本当に白居のことが好きなんですか?」
本当に―
好き?―
「…そんなこと…森下先生に話す必要ないじゃないですか」
琴は俯きながら答えた。
「矛盾してますよ」
突き返す森下の言葉。
琴だって分かっていた。
自分の矛盾点に。
本当に好きなら、何故直接本人に聞けないのだろうということ。

