「私があんたを試したのよ」
関口先生はハンカチでまだ湿っぽい琴の目元を拭いた。
「試す?」
「あんた、昼間言ってたじゃない。自分の本当の気持ちが解らないって」
「…だから?」
「意地悪しちゃったわね。でも、その様子なら分かったんでしょ、自分の気持ち」
「はぁ…」
琴はまだ腑に落ちないようでしかめっ面をしている。
「大丈夫。あなたの好きな白居真人くんは保健室にいるわ」
「へっ?」
思わず間抜けな声を発してしまう琴。
それを聞いて関口先生はお腹をかかえていた。
「私が保健室に呼んだのよ」
再び琴の目が点になった。
「せっ…関口先生…?」
「恨まないでよね。好意で試してあげたんだから」
「好意って……」
琴はクラクラになった頭を押えた。
「ほら!自分の気持ちに気付いたなら、さっさと保健室行きなさい!」
関口先生は琴の背中をバシっと叩いた。
「先生は?」
「私はココにいるわよ。お邪魔虫になりたくないもの」
鼻歌を歌いながら日当たりのいい窓側の席に座る関口先生。
「…白居先生の話、受け入れてもらえなかったらどうしよう」
琴は不安そうな声で俯いた。
「その時は私が胸貸してあげるわよ…」
窓の外を見ながら、関口先生は優しく語った。
琴はその光景を見て、ただ唇を噛み締めていた。
関口先生の優しさを、噛み締めていた。

