ふと立ち止まり見上げた桜は寂しげに散り始めてして。

命が散りゆくその瞬間を私はただ見つめる事しかできない。


地面には桜の花びらが沢山しかれていて


それが絨毯のように、並木道の出口まで続いている。


また来年まで桜は見られないのか..


そう思いながら歩き出すと


「どうかしたの?」

え?

上を向くとと見覚えのある顔がすぐ前にあって。



「せ、先生。おはようございます」


「なんか考え事?」

「い、いえ。何でもないんです」

「そうは見えないけど」


穏やかで優しい口調に
つい何があったのか話したくなる。

でも

近付いたらいけない

もう一人の自分がそう警報をならしている。


これ以上、この人の傍には居られない。

「ほんとに、何でもないんです」

出来るだけ普通に、笑顔で。

先生に通じるように、祈りながら言うと


「そうか。何かあったら言ってね」


先生がそう笑顔で言ってくれた。

でも

「そうだ。放課後少しだけ付き合ってくれない?」

「え?」