桜の花が舞う頃に



「ちょ、真姫」

私の声を無視して続く真姫と先生の会話。


「いや、まだなんだ。君の名前を教えてくれるかな」

「やっぱり。この子ほんと抜けてるんですよ」


どうしよう、隠さなくちゃいけないべきなのに。

名前が思いつかない。

チラッと榎木先生を見るけど私の視線に気付いていないのか
黙って二人のやり取りを見ている。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。

「ほら、ちゃんと自己紹介しなさい!」

ポンっと肩を叩かれて視線を先生に向ける。


「私の・・名前は・・」

瞳をぎゅっと閉じたその時だった