声を出すのが苦しい。 胸が痛くて、これ以上前に進めない。 「泣いてるよ?」 耳にすーっと入る低い声。 でも私はそれが誰の声なのか知らない。 誰? 溢れる涙を必死にぬぐって前を見ると、目の前には 知らない制服を着た男の子が立っていた。 「だい、じょうぶです」 そう答える私の前に 「そうは見えないけど」 にこりと笑って手を差し出した。