「ジンを」


静かで落ち着いているこの場所は、陸斗が指名してきた
バー。

少し暗めの明るさが少しだけ気分を落ち着かせてくれる。


アイツもこんなところに通うようになったんだと思うと
何だかおかしな気持ちになった。


とりあえず着いてすぐカウンターに座り、
自分が一番好む酒を頼む。


「かしこまりました」

一礼をしたマスターは僕から見ても男前で、
酒を作る姿すらカッコいいと思ってしまうほどだ。


店内は薄暗く、

明るいテンポのジャズが小さめの音で流れている。


今、この時間は俺しかいない。


「初めてのお客様ですね」

「はい、友人と待ち合わせをしてるんです」

「そうですか、ご友人と」

「そのご友人ってのはオレなんですけどね」


後ろから声が聞こえて振り返った。