「こんにちは、生徒さん」

私の声に気付いたのかどうかは分からないけれど
海咲先生がこちらに向かって歩いてきた。


「こんにちは」

「君も見ていたの?桜を」

穏やかで、優しい声。

「はい、先生もですか?」

「うん、好きなんだ。ここ。綺麗だよね」

「ひょっとして、朝もここで見てました?」

「うん」


やっぱり。朝の人は先生だったんだ。


「君は何年生?」

「私は三年ですけど」

「そうか、残念だな」

「どうして?」

「僕が担当するのは1、2年だから」

少し残念そうな声をする。

それだけでこの人がどういう人なのか

なんとなく分かってしまう。

いいのは顔だけではないみたい。


きっと中身もいい人なんだ。


「それは残念です。先生の授業受けたかったのに」