「そんな...」

「幸子にね、赤ちゃんが出来たの、それが響夜くんだった。
辛かったわ、あんなに我慢してきたのは一体何だったんだろうって
そう思った。でもね、あの人は帰って来たの、私の元へ。美麗、あなたが出来たからよ」


私が生まれたから

だからお父さんが戻って来たの?


「これでもう何もかもが元通り。全て順調にいったかと思った。
でも残酷にもそれで終われなかった。..響夜くんのお葬式で私達は再び再会した」



謎だった事が

知らなかった事がどんどんパズルのように


あてはまっていく。


分かっていく。

でもそれが嬉しいんじゃない。


「二人は考えた。生きている限り、二人は結ばれる事はない。
だったら・・二人は死を選んだのそしてあの世で結ばれることを
望んだ。あの人は最後、本当に好きだった人と結ばれたの。皮肉にも
私の親友だった人とね。そして死後、あの人のスーツのポケットから
今話した事の全てが書かれていた。遺書として」


全ての話が終わり、沈黙が流れる。


誰ひとり喋らない、動かない。

ただチクチクチクと時計の秒針を刻む音が聞こえてくるだけ。


お母さんはどんな気持ちだったんだろう。

どんな気持ちでお父さんの最期を見たんだろう。


きっと辛かったんだろうな、悔しかったと思う。



でもだからって

私のこの気持ちは今更どうにもできない。